カトリックさいたま教区/CATHOLIC SAITAMA DIOCESE

司教メッセージMESSAGES

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2010年新年の司教メッセージ 

2010.12.1 (金)
"キリストに代わってお願いします。"(1)

さいたま教区の兄弟姉妹の皆様

クリスマスおめでとうございます。そして、新年おめでとうございます。

 経済不況の中、仕事や生活のことだけでなく、精神的にも苦しい状況に置かれているかたも多いと思います。そのなかで、多くの小教区やブロックで、兄弟姉妹として共に祈り、分かち合い、助け合ってくださっています。その姿を見て、わたしは逆境のときこそ、神の恵みが多く注がれると実感しています。
 さて、今年はわたしが司教に叙階されて十年になります。その年頭にあたり、神との和解について皆さんと分かち合い、共に黙想したいと思います。

神との和解
 神はキリストを通して罪のうちに沈められていたわたしたちを救い出し、神と和解させてくださいました。和解とは神と人間との本来の関係を回復することです。しかし、社会を見渡すと、人間と神との和解はまだまだ実現していません。実際、この世界に罪と悪や争いが存在し、平和と平等は実現していません。わたしたちは、神と和解したのですから、神との和解を一人でも多くの人々に伝える役割を担っているのです。パウロは次のように語っています。
「神は、キリストを通してわたしたちを御自分と和解させ、また、和解のために奉仕する任務をわたしたちにお授けになりました。」(2)
すでに、皆さんが平和のために祈り、聖書の言葉を伝えるなどさまざまなところでこの「和解のための奉仕の任務」を果たしておられます。ここでは神との和解について、わたしたちにとって身近なことを、三つお話したいと思います。

自分自身との和解
 依存症からの回復プログラムに12ステップというのがあります。その12ステップの祈りに次のような一節があります。
「私がどんなに無力であるか、私の生活がどんなに手に負えなくなっていたか、気づくことを否認がはばんできました。」
自分の弱さ、限界、生活の息苦しさ、それらを自分自身のなかの否認が、気づくことをはばんでいるのです。自分を強がって見せたり、隣人の目を気にしすぎたりしていないでしょうか。友人の忠告に耳を傾けているでしょうか。ありのままの自分を神が受け入れてくださっている、それを思い起こすことが自分を受け入れるきっかけになります。
わたしたちは経済、効率ばかり優先する社会の価値観に巻き込まれています。人によっては、負いきれない重荷や期待を負わされていることもあります。それに応えようとするか、拒絶するか。いずれにしても、自分は本当に何がしたいのか、何を望んでいるのかに気づくことさえ忘れてはいないでしょうか。
 自分自身との和解のために、心と体、生活、隣人との付き合いなどを、振り返ってみる祈りの時間、分かち合う時間を大切にしたいと思います。

隣人との和解
 わたしは皆さんが兄弟姉妹として、一つの食卓を囲む共同体を実現してくださっていることをうれしく思っています。しかし、共同体にも分裂やいさかいが起こることも、教会を離れる人がいることもわたしたちは知っています。共同体を作ることは人間(にんげん)のいとなみですから、そのようなことがあっても当然(とうぜん)といえます。しかし、「兄弟愛をもって互いに愛し、尊敬をもって互いに相手を優れた者と思い」(3)、真摯に話し合い、共同体の一致を求めていただきたいと思います。「一つの部分が苦しめば、すべての部分が共に苦しみ、つの部分が尊ばれれば、すべての部分が共に喜ぶのです。」(4)
 隣人との和解にどうしても必要なことは聖霊の導きです。わたしたちの思いや働きが聖霊によるものであるかどうかを分かち合いのうちに識別していくことが求められます。パウロの次の言葉を参考に分かち合ってください。
「一人ひとりに“霊”の働きが現れるのは、全体の益となるためです。神は、御自分の望みのままに、体に一つひとつの部分を置かれたのです。目が手に向かって“お前は要らない”とは言えず、また、頭が足に向かって“お前たちは要らない”とも言えません。」(5)

自然との和解
 自然との和解というと、神と人間との和解とは少しはずれていると感じるかもしれません。しかし、神の被造物である自然との和解は、清貧という人間の生き方にかかっています。それは、とりもなおさずキリストの示された神と人間との本来の関係(かんけい)を回復することなのです。
「清貧とは何か?」についてわたしは皆さんとの分かち合いのなかで三つのポイントがあることを学びました。一つ目は金や物から開放され、自由になること。二つ目は神の被造物である水や空気といった自然、その実り、生産物の価値を正当に評価すること。そして三つ目は、人や自然と出会うことです。清貧についてここで詳しくお話しできませんが、近いうちに皆さんとかち合っていきたいと思います。
 宣教司牧評議会への諮問「貧困、環境の課題について教会ができることは何か?」に関して、昨年、皆さんが真剣に話し合ってくださいました。その結果が1月に答申されます。この答申を受けて、教区としての自然との和解の道を歩む取り組みを始めたいと思います。

 和解について分かち合ってみました。この一年、皆さんと共に「和解のために奉仕する任務」を少しでも果たすことができればと願っています。
新しい年が皆さんにとって恵み多き年となるよう祝福を送ります。

✚全能の神、父と子と聖霊の祝福が皆様の上にありますように。

                         
2010年1月1日
カトリックさいたま教区

司教 谷 大二

(1)Ⅱコリ5:20、(2)Ⅱコリ5:18、(3)ロマ12:10、(4)Ⅰコリ12:26、(5)Ⅰコリ12:7〜22、