司教メッセージMESSAGES
豊かな共同体を目指して
2008.1. 1 (土)
今年、日本の教会は188殉教者列福とブラジル移民100年を記念します。この二つの記念は単なる過去の記念ではなく、今日の私たちにとって大切な意義があります。この意義について共に考え、私たちの共同体を成長させていきたいと願っています。
400年前、日本のカトリック信者は40万人。そのうちの2万人が殉教しました。実に、信者の20人に一人が殉教したのです。それほど強い信仰をもった共同体があったのです。なぜ、これほど強い信仰を持つことができたのでしょうか? 当時、迫害のもとで司祭不在の時代でした。教会は「組」という小さな共同体を作りました。そこでは貴賎の差別なく、平等を基本としていました。彼らはしばしば集まり、分かち合いをし、キリストの教えを学び、役割分担を決めて活動していたのです。この共同体が殉教者を生み出す強い信仰をはぐくんだのです。殉教者たちは、この世の権威より神の権威が上にあるという信念のもと、自らの信仰を公にして、十字架の道を歩みました。
いま、私たちが進めている協働宣教司牧はこの「組」をイメージしています。2年前に発行した『協働宣教司牧ってなに?−豊かな交わりを目指して』では、分かち合い、聖書、役割分担というモデルを示しています。信徒、司祭、シスターが共に集まり、それぞれの役割を果(たしていこうとするものです。また、上から下に「える」という形ではなく、「共感」することを大切にする宣教司牧を進めていきたいと思っています。そのことによって豊かな共同体がはぐくまれるのではないでしょうか。
一方、いま憲法の改正について9条だけではなく、20条についても議論が始まっています。憲法20条は信教の自由に関する条文です。憲法20条によって、私たちに信教の自由が保障されるようになりました。それを変えることは私たちにとっても重大な問題です。再び戦前のような迫害が起こることにもなりかねません。
188殉教者は2万人の殉教者の代表者として選ばれました。さいたま教区に関係するすべての殉教者たちのためにも祝うことになります。さまざまな機会を通して、殉教者のことを思い、私たちの共同体を豊かにしていきましょう。[i]
もう一つの記念はブラジル移民100年です。日本からブラジルに移民として働きに出かけたのは1908年からです。戦後にも多くの移民を出しています。移住した人々は大変な苦労と努力の上に、日系人社会を形成してこられました。いま、かつて日本から移民を送り出した国々から、多くの人々が移住者として日本に来ています。さいたま教区の日本人信徒数は2万人ですが、海外からの移住信徒は10万人です。わたしたちの共同体は多文化共生の教会となり、豊かな共同体として成長する恵みを享受しています。常総市の新たな共同体の誕生は、その恵みのしるし、移民100年の記念でもあります。[ii]
しかし、日本の社会は移住者たちに対して法律の上でも、共同体形成という意味でも厳しいものがいまだに残っています。国際化が進む時代にあって、カトリック教会が社会の先駆者となり、多文化共生(きょうせい)のモデルとして社会をリードしていくことが求められています。
もちろん、ブラジル以外に、ハワイ、フィリピン、南米などの多くの国に日本から移民として渡っていきました。そして、それらの国々からも多くの人々が日本に来ています。そのことも合わせて記念したいと思っています。[iii]
新しい年が、この二つの記念を通して、神の恵みと聖霊の導きがあるよう祈りたいと思います。
✚ 全能の神、父と子と聖霊の祝福が皆様の上にありますように。
[i] 11月24日に長崎で殉教者列福式が行われますが、さいたま教区でも渡瀬殉教祭古河殉教祭が行われます。また、殉教者に関するイベントを企画する予定です。
[ii] 2008年のクリスマスまでに常総教会が完成する予定です。皆様のご協力をお願いいたします。
[iii] 4月27日に神戸で移民100年祭が企画されています。さいたま教区では6月29日に移民100年祭を企画しています。