カトリックさいたま教区/CATHOLIC SAITAMA DIOCESE

司教メッセージMESSAGES

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復活節第4主日 ヨハネ 10・11-18

2021.12.25 (日)
 今日、復活節第4主日は、「良い羊飼いの日曜日」と呼ばれています。また、「世界召命祈願の日」にも当たり、今年ですでに58回目に当たります。第58回ということがこの祈願日の大切さを表しています。

 教会は、疑いなく、いつも召命のために祈ってきました。イエスご自身が招いてくださったからです。「収穫は多いが、働き手が少ない。だから、収穫のために働き手を送ってくださるように、収穫の主に願いなさい。」(マタイ9・37-38、ルカ10・2)。しかし、私たちは召命という言葉に関して、理解を新たにしなければならないと思いました。私たちの祈りがもっと深い意味合いを持つものになるために。この世の中でのキリスト者としての使命を生きる時、緊急性を挑戦として意識するために。教皇フランシスコはそれぞれの召命を、1世紀にヨセフがガリラヤ地方で生きたように、私たちも一人ひとりが置かれている社会で神の愛の証し人となって、その召命を生きることを受け入れるよう強調しています。その召命の一つが奉献者として生きる道です。奉献者といえば司祭、終身助祭、修道者(男女)が神様から与えられた使命を忠実に果たし、またこの生き方が本当に神様からの呼びかけであるかを識別する志願者や神学生たちが、いつも教会に与えられるように祈る「世界召命祈願の主日」です。

 そもそも、この祈願日は教皇パウロ6世によって制定されました。1963年、教皇パウロ6世が「良い羊飼いの日曜日」を世界召命祈願の日として定められたときの願いは、これを祝う時、私たち一人一人が召命の使命を忠実に果すことができるように、収穫の主人である主に祈ることでした。教会は、「洗礼によって全てのキリスト者が受けている召命を尊重することを忘れてはならない」といつも私たちを招いています。神様が私たちに示してくださる具体的な方法で、召命の使命を生きることを勧めています。結婚、司祭職、助祭職、奉献生活、あるいは独身生活において、イエスの模範と神の国の福音の言葉にインスピレーションを受けて、よりよい世界を築くためにお互いに助け合えるようにと。

 そこで、今日は、教皇フランシスコが世界に向かって送られたメッセージを皆さんと分かち合うことにいたします。メッセージは短いものですが、その中の最も魅力的な部分を強調したいと思います。

教皇様のメッセージ
 教皇様の今年のメッセージのタイトルは「聖ヨセフ--召命の夢」となっています。その大事な部分―「ヨセフの四つの夢」の箇所を読んでみたいと思います。それは、間違いなく、神様が私たちに与えてくださっている召命の使命を、もっと喜びと充実感をもって生きるための助けになると思うからです。


 『親愛なる兄弟姉妹の皆さん

    聖ヨセフを普遍教会の保護者とする宣言150周年に当たる昨年の12月8日に、聖ヨ
  セフにささげられた特別年が始まりました(「内赦院教令(2020年12月8日)」参
  照)。またわたしは、「この偉大な聖人への愛を深め」るようにと、使徒的書簡『父
  の心で』を著しました。ヨセフは、実に偉大でありながらも、「わたしたちそれぞれ
  の人間的境遇にきわめて近い」人物でもあります。このかたは、何か圧倒的なことを
  なしたわけではなく、特別なカリスマがあったわけでもなく、はた目には重要な存在
  には見えませんでした。有名でもなく、目立ちもしませんでしたので、福音書はヨセ
  フのことばを一言も記していません。それでも、そのありふれた生涯をもって、ヨセ
  フは、神の目には特別なことをなし遂げたのです。

 (中略)

   福音書は四つの夢を語っています(マタイ1・20、2・13、19、22参照)。それらは
  神からの呼びかけですが、受け入れるのは困難なものでした。それぞれの夢の後、ヨ
  セフは自分の予定を変更して危険を冒し、神の神秘の計画を支えるために、自らの計
  画を犠牲にしなければなりませんでした。神に完全に信頼していたのです。ですが、
 「ヨセフがそれほどまで信頼を寄せた一夜の夢は、いったいどんなものだったのか」と
  疑問に思うかもしれません。古代には夜見る夢は重視されてはいましたが、実生活の
  現実に比べれば小さなことです。それでも、聖ヨセフは、躊躇することなく、夢に導
  かれることを選びました。なぜでしょう。このかたの心は神へと方向づけられてい
  て、すでに、神に向かう素地があったからです。その研ぎ澄まされた「内なる耳」が
  神の声を聞き分けるには、わずかな合図で十分でした。それはまたわたしたちを呼ぶ
  声にも当てはまります。神は、わたしたちの自由を力づくでねじ伏せるように、華々
  しくご自身を現すことを好まれません。神はご自分の計画を穏やかに知らせてくださ
  り、衝撃的な光景をもって困惑させるよりも、わたしたちの内面にそっと語りかけ、
  親しく近づき、わたしたちの考えや気持ちを通して語りかけてくださるのです。です
  から神は、聖ヨセフになさったように、わたしたちにも立派で驚くべき目標を提案し
  てくださいます。

    (中略)

   夢はヨセフを、想像もしなかったような冒険へと導きました。最初の夢によって、
  自身の婚約は揺らぎましたが、ヨセフはメシアの父親へと変えられました。二つ目の
  夢で、エジプトに逃げねばならなくなりましたが、家族のいのちは救われました。三
  番目の夢は故郷への帰還を告げ、四つ目の夢は、その計画を再度変更させナザレへ
  と、イエスが神の国を告げ知らせ始める地へと向かわせました。こうした紆余曲折の
  中、神のみ旨に従う勇気が勝ったのです。召命においても同じことが起こります。神
  の呼びかけはつねに、出掛けて行きなさい、一生懸命になりなさい、さらに遠くへ行
  きなさいと駆り立てます。リスクのない信仰はありません。自身の計画や安泰を捨
  て、信頼のうちに神の恵みに身をゆだねることによってのみ、本当の意味で、神に
 「はい」とこたえられるのです。そして一つ一つの「はい」が実を結ぶのです。その
 「はい」は、より立派な計画に従うものだからです。わたしたちはその計画の一端を垣
  間見るだけですが、芸術家である神はそれに精通しておられ、それを推し進め、そう
  して、一人ひとりのいのちは欠くことのできない傑作となるのです。その意味で聖ヨ
  セフは、神の計画を受け入れる模範像となっています。実に、その像は能動的受諾
  で、このかたは決してあきらめたり挫けたりせず、「受身に甘んじる人ではありませ
  ん。勇敢で強い主人公です」(使徒的書簡『父の心で』4)。ヨセフの助けによっ
  て、すべての人が、とくに、識別の最中にある若者たちが、神が自分たちのために描
  いておられる夢を実現していけますように。わたしたちをいつも驚かせ、決して落胆
  させない主に、「はい」と答える、勇気ある意欲をヨセフが鼓舞してくださいますよ
  うに。』

 聖ヨセフに倣って、現代社会で神の国を築いていく協力者として、主の呼びかけに寛大さをもって、日曜毎のミサで祈りましょう。

(付記)教皇フランシスコの世界召命祈願の日、2021年4月25日のメッセージ全文をお読みになりたい方は、バチカンのページを開いてください。多くの言語で書かれています。
http://www.vatican.va/content/francesco/es/messages/vocations/documents/papa-francesco_20210319_58-messaggio-giornata-mondiale-vocazioni.html
日本語では日本司教団のページをご覧ください。https://www.cbcj.catholic.jp/2021/04/16/22396/